2011年8月9日火曜日

山元 加津子さんは 特別支援学校の先生です



第735号 宮ぷー こころの架橋ぷろじぇくと
2011年8月9日現在 参加者人数4683人
このメルマガを初めて読まれる方へ
メルマガの生い立ちをこちらのページに書いていますので、ご参照ください。
http://ohanashi-daisuki.com/info/story.html


出会いというのは、本当に不思議ですね。特別支援学校で出合った大ちゃんは「お互
いが必要じゃないと出合わないんで」って言うんです。ああ、きっとそうなんだ。そ
うだったら、うれしいなあと思います。

わたし、ほんとにすぐ迷子になるので、あんまり一人で電車に乗るとかないんですけ
ど、あるとき、東京の山の手線に一人で乗ったんです。電車が来て、ドアが開いた
ら、何か様子が変だったのです。黒い洋服を着て、黒いシャツを着て、黒い靴をはい
た、髪の短い男の人が、学生さんの襟首をつかんでを殴っていたのです。

私はそのとき、学校でみかちゃんという女の子と毎日いっしょにいたのです。みか
ちゃんは、とってもつらいことがあると、ほんとに心がとてもとてもつらくてたまら
なくなると、よその人の髪をギュウっと引っ張ってしまったり、殴ってしまったりし
てしまうのです。ピアノなんかもドーンと倒してしまうのです。ほんとにすごく細い
女の子なんだけど、そういうときはすごく怒っているから、すごい力が出ちゃうので
す。
それでも、気持ちが収まらないと、自分の顔もバンバン殴って、顔を紫色にしちゃっ
たりもします。けれど、「みかちゃん大好き」と言ってぎゅっと抱きしめて 「だい
じょうぶだよ、怖くないよ」 って言うと、だんだん落ちついていく、そんなみか
ちゃんとちょうどいたときだったのです。

そのみかちゃんと、黒い服を着た男の方が、ちょうどわたしの中でかぶさったのか
なぁって、そのときはあんまりよくわからなかったけど、あとで思いました。
頭から足先まで黒い服のその男の人をぎゅっと抱きしめて、「だいじょうぶ、怖くな
いよ。怖くないから、だいじょうぶです」 って言ったのです。
そうしたらビックリしたことに、その黒い服の男の人の目から、涙がポロポロと流れ
たのです。その方は「自分は極道だ」とおっしゃいました。極道ってやくざさんのこ
とかなあと思いました。やくざさんは強そうだけど、でも、つらいことがいっぱいあ
るんだろうと思ったんです。私が抱きしめたことをやくざさんは「どうしてそんなこ
とをするの?」 とおっしゃったので、「とってもつらそうだったから」 って言った
ら、またオーって声をあげて泣かれたんです。

そして、一緒に横に並んで座席に座りました。
「今からどこ行くの?」 とおっしゃったので、「講演会に行きます」 って言った
ら、「誰の?」 って言われたので、「わたしのです」 と言ったら、「おじさんに嘘
をついてはダメだよ」 っておっしゃったんです。「嘘だろ」 って言うんです。
たぶんこんなわたしが、どなたかの前でお話しても聞いてくださる方がいるだろうか
と思われたのだと思います。でも嘘ついてると思われるのも悲しいから、どうしたら
いいかなぁと思って、ちょうどわたし、そのときに、『たんぽぽの中間たち』(三五
館) という黄色い本を持っていて、それにわたしの顔が後ろのページに載っていた
と思って、その本を見せて「これわたし、これわたし」と言いました。

そしたら、そのヤクザさんが 「ああ、ほんとだ!」 と思ってくださって、「僕も今
から講演会について行ってお話を聞きたいけど、僕が行くと迷惑をかけるから行けな
いなあ」 と言って、お友だちになって、それから文通友達になりました。
お友達と別れるときに、「僕は今、どうしてもあなたに言っておきたいことがある」
と言われました。「何ですか?」 と言ったら、「またこんな場面になったときに、
今日みたいなことをしちゃダメだよ」 って言って、「僕みたいに優しい極道ばっか
りとは限らないからね」 って、そう言われたんです。その方は、普段は絶対に一人
で電車なんか乗らないんだそうです。でも、なぜかその日は乗ったということでし
た。

そのあと『たんぽぽの仲間たち』 の本をすごくいっぱい買ってくださったんです。
その方は組の偉い人で、組長さんか何かで、朝の会で 『たんぽぽの仲間たち』 の本
を使ってくださって、「毎日たんぽぽの話をしてるよ」 とお手紙をくださいまし
た。ある日、「かっこちゃんは、人を殴るのは嫌いですか?」と書いてありました。
わたしは「好きじゃない。やっぱりとっても怖いですから、人を殴るのは好きじゃな
い」 って、「言いたいことがあれば伝えればいい。でも殴るのは好きじゃない」と
お返事に書きました。そうしたら、お友達は「だったら僕も、絶対に殴らない
よ」 って約束してくれたのです。

けれどある日、「僕はかっこちゃんとの約束を破ってしまったよ」 って葉書きをも
らいました。どういうことかというと、ちょっと細い道を大きな車で移動していた
ら、車椅子のおばあさんが、溝にはまっていたのだそうです。車が通れなくなってい
たので、若い人に、「あのおばあちゃんを助けてあげなさい」と言ったら、若い人が
降りて行って、「そこをどけ」って言って、そのおばあちゃんを殴ってしまったので
す。そこで、そのわたしのお友だちのヤクザさんが、その若い人に、「おまえのため
に毎日たんぽぽを読んでやってるんだ!」って言って、「助けてあげてお送りしなさ
い」って、そう僕は言いたかったけど、そのときに若い人を殴ってしまった、って
おっしゃっていました。

「僕は虫にも気持ちがあることを知りました」って、その同じ手紙に書いてくださっ
ていました。今まで虫とかそういうものが、たとえば誰かを好きになったり、そんな
ことをするなんて思わなかった。それから気持ちがあるなんて思ったこともなかった
のに、たとえばカエルがじーっと窓に止まって虫を食べようとして、そのチャンスを
うかがっている。そういうものも、こう目に止めて、じっと見るようになったとか、
そんなことも書いてくださいました。

その方と文通しはじめた頃は平仮名が多いお手紙だったんですけど、ある日突然ワー
プロのお手紙を送られてきたら、急に漢字ばっかりになってて、すごくビックリした
んです。その方のお手紙にはこんなふうに書かれてありました。
・・・・・
前略、ごめんください。お元気でいらっしゃいますか?
かっこさんは、ビックリしてると思います。パソコンをあれからしばらくは箱のふた
を開けたり閉めたりしていただけでしたが、いつまで経ってもこれでは拉致があかな
いと思い、奮起して、先ず文字を打つことからしています。これでも四苦八苦です
が、かっこさんのビックリした顔を頭で考えながら、手紙から始めています。いつに
なったらインターネットができるのかわかりません。(加津子注……わたしが 『た
んぽぽの仲間たち』 というHPを持っているので、それを毎日のぞこうと思ってパ
ソコンを買ったそうです。)

若い者にもパソコンができる者がいるので、聞くことができれば良いのですが、僕は
つまらない人間で、情けなくなるのですが、自分から「教えて欲しい」という言葉は
なかなか使えません。かっこさんはどう思うか、でも他の人は極道がパソコンをする
とは思わないと思うのですが、若い者の中には機械が好きな者もいます。だから「教
えて欲しい」と頼めばどんなに喜んでくれるかわかっているのだが、自分はいつも
「人様には教えてもらうことばかりだ」 と若い者に言っていながら、けちな心や人
に教えてもらうことが恥ずかしいという心が邪魔をして、それができないのです。偉
そうにしながら、人間が小さいという証拠です。

人間が小さいと言えば、送らせていただいた人形は、恥ずかしながら僕が行って買っ
たものです。(加津子注……バレンタインデーにキティちゃんの大きな人形を送って
くださったんです。)僕は若い者に頼むこともできたのでしょうが、それも恥ずかし
く、自分で行って、店の前で入ろうと思って止めて、入ろうと思ってまた止めて、そ
れでも、かっこさんが喜ぶ顔が見たくて店に入ったのです。思えばキティちゃんが何
かということすら知らなかった僕が、店でキティちゃんのものを買おうとしてるのだ
から、変わったものです。店の人も、僕が入って行ったものだからビックリしていた
ようでした。自分に合わないというか、かっこちゃんたちのような女性がたくさんい
たので、それでもう出てしまいたかったです。「何でも良いから包んでくれないです
か?」と店の者に言ったら、「たとえば、どんなものですか?」と言うので、「取り
あえず、それを」と、人形を買いました。もっと違った物が良かったかな?

しかし僕は、前から思っていることがあります。(加津子注……ここから書いてくだ
さっている文は、とってもわたしにとっては気恥ずかしいのですが、書いてあるの
で…。) かっこさんに会うと、誰でも会う前と変わってしまう。まだまだ若い者に
習うということができないでいるが、そのことが恥ずかしいとは思わないでいたし、
パソコンはやるし、おもちゃ屋は入るし、そんなことは今まで考えもしなかったし、
誰が見ても信じられないことでしょう。しかし、まわりのみんなも「変わった変わっ
た」と言います。『たんぽぽ』 を話してやると、若い者も変わって行きます。おそ
らくかっこさんは、今もまわりを変えているのでしょう。でもかっこさんは、「そん
なことはないのだ」 といつも言いますね。

クリスマスには何も贈れなかったが、その人形で我慢してやってください。風邪をひ
かないでください。手紙というものは、自分で書いてもつらいが、パソコンで書いて
もまだこんなに大変なものです。
・・・・・

初めてパソコンで文字を打つのはどれだけ大変だっただろうと思います。誰にも教わ
らないで、こんなに長い文章をくださったのだと思うと、涙が自然とこぼれました。
お友達は「変わった」と言ってくださったけど、私こそ、お友達と出会えてすごく変
わったなー、と自分で思います。
最初は、極道さんとかヤクザさんて、怖い人だとばかり思っていました。道でピスト
ルで人をズドーンっと撃って殺しちゃうのかなーとか、そんなことをお友達と知り合
う前は思っていたと思います。

でもその方は、とっても優しい方で、ボランティア活動にもみんなで出かけているん
です。ゴミ拾いとかもしてるとおっしゃっていました。災害が起きれば真っ先に災害
地へ出かけるのです。東北の方へもずっと出かけられているそうです。
お友達は、「かっこさんはどう思うか知らないけど、僕たちの世界には、他の世界で
今ある社会で、たとえば生まれとか、国とか、育ちとか、いろんなことで分けられ
て、つらい思いして入って来ている若いやつがいっぱいいるんだよ。この世界では誰
も平等で、誰も差別しないから、ここに帰って来るんだよ。そういう苦しい気持ちも
わかってやって欲しい。人は、やくざを極道の者を責めるけど、そういうところに追
い込んでいるのは、社会の人たちなんだよ」 と教えてくれました。

そんなことも、わたしは全然その方に会うまで気がつけなかったのです。
人はみんないろいろに生まれます。生まれも育ちもいろいろ。でも、人と人が交わる
と、人はいろんな大切なことに気がつけて変わって行けるなあと思うのです。それ
が、人がいろいろに生まれるという理由なのかな? それが人が出合っていくことの
意味かなと考えています。

お友達とは、今も、メールでお互いにしょっちゅう連絡をとりあう大切な間柄です。
お友達は今、組のみなさんとずっと東北に出かけて、がれきの処理のお手伝いや、み
なさんのおうちでお手伝いがないですか?と尋ねてお手伝いをされています。それか
ら、宮ぷーのこともずっと応援してくれていて、宮ぷーの動画を見ては、声をあげて
泣くそうです。本当に優しいお友達。いただくメールにいつも涙がこぼれます。お友
達が大好きです。

かつこ

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